用の美

CITIZEN ALARM

https://ms.citizen.jp/assets/082_11-05_アラーム_01

 1958 年、国産初の「ベルのなる腕時計」として開発され、当時の大卒初任給とほぼ同額の9,200 円だったにも関わらず、様々なバリエーションも派生し長く売れ続けたモデルです。
 付加機能であるアラームを文字板中心に目安針として表現し、使い勝手の良さそうなりゅうずを特徴のある2 時と4 時に配し、機能と意匠が美しくまとめられているところがその理由だと思います。
 優れたデザインというのは、このように機能を説明書を見ずしても形だけで使い方とその目的が想像出来るよう、美しくまとめられているもののことだと思います。

082_11-05_アラーム_02ケースデザインは、この時代定番の細縁、シンプル形状ですが、当時日本初となるアラーム機能を視覚的に表現するため特徴的なりゅうず配置と文字板中心の目安円板針で唯一無二のモデルに仕上げています。ラグ上面を2つの違う角度の面構成でエッジを付け、実際より細く見せています。ラグ裏エッジ部に面取りを付け肌あたりに配慮。

082_11-05_アラーム_03ケースデザインは当時主流だった細縁でシンプルな形状。

082_11-05_アラーム_04ラグ裏エッジ部に面取りをして肌当たりに配慮。ラグ上面を2 つの違う角度の面構成でエッジをつけ、実際より細く見せています。

082_11-05_アラーム_05初期モデルはアラーム音を共鳴させるために「二重ぶた式」になっており、中の共鳴用裏ぶたの音をきれいに響かせるために外ぶたには放音孔がついています。

082_11-05_アラーム_08ケースサイズに対して少々大きめの5.5mmのりゅうずを、2 時側にアラーム用、4時側に時刻修正用と2つ付け、操作性を良くし、デザイン的にも一番の特徴となっています。

082_11-05_アラーム_06文字板中心部に円形のアラーム時刻目安板を配し、全体が回転することで必常に分かりやすく使い勝手に貢献しています。

082_11-05_アラーム_07秒針はストレート、時分針はダイヤ形状の針という非常にベーシックな組合せですが、長い秒針と分針はボックスガラスとの干渉を避けるために先端をカーブさせています。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

https://ms.citizen.jp/assets/100_12-08_L 漆玉_01

光を感じる時計

 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

https://ms.citizen.jp/assets/099_12-07_L ムービングダイヤ_01

自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/098_12-06_エクシード ユーロス_01

最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。