Ryuji Tonohori

DESIGNER

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名前
殿堀 隆二
専門
プロダクトデザイン
地域
日本
経歴
千葉大学工学部工業意匠学科を卒業後、シチズン時計に入社しました。1986年に工場の製造部門に初めて設立された「デザイン開発室」(現:デザイン部)に配属され、アジア市場向け商品のデザインからスタート。その後、北米市場向け商品のデザインを担当中にリーダーを任されることとなり、本部主導モデル、欧州市場向け商品、新ムーブメントの開発に携わりながら、プロマスターカテゴリーのデザインをメインに担当しています。
趣味
カラオケ
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多くの機能をシンプルに

プロマスター アクアランドは水深計搭載のダイバーズウオッチシリーズです。「アクアランドの“継承”と“進化”を感じさせるダイバーズウオッチを作る」という企画のもと、いま一度プロマスターの基本コンセプトに立ち返り、多くの機能をシンプルに表現した本格ダイバーズウオッチの開発を行いました。ミニマルなデザイナーズウオッチや、インパクト重視のデザインなどが混在する幅広い市場において、過酷な環境下にも耐えることができるよう機能性/耐久性/安全性を徹底的に追求した、新しいスタンダードとも言えるモデルです。高い機能性とデザイン性が評価され、2018年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

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腕時計本来の役割

 腕時計は文字通り“時”を刻むもの。  本モデルはその“時”をいかに見やすく、いかに美しく魅せるかに注力しています。針や時字の形状・仕上げ、大きくて見易い日表示はもちろん、ケースやベゼルは複数の面が効果的に組み合わさっていて、光の反射によって、あらゆる角度から見ても美しい仕上がりになっています。  中3 針の場合、単調になりがちな“顔”も、10時位置に配した“充電量表示”がポイントとなり個性を表現しています。  裏ぶたの象徴的なエンブレムは、持つ人に満足感を抱かせる演出で、ケースのサイズやラグの落とし方は、とても腕なじみが良く、ザ・シチズンの名に恥じない腕時計本来の役割を果たすデザイン。  端整で上品。かつ高級感あふれる1 本に仕上げられています。

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流れの中にあるリズム または流線型であること

 視覚的、また物理的にも腕への装着感の高さを感じさせるデザインになっています。  バンドからケースにかけて、流れるようにラインがつながっています。しかしそれは単調なリズムで終わっていません。ケースに流れ着いたとき、突然テンポを変えています。そのことで、単純なフルフローデザインで終わることなく、ケースの存在感もしっかり表現されています。  全体の仕上げを見てみると、両サイドのみミラー仕上げにし、大きな面を占めるセンター部を12時 - 6 時ヘアラインとしています。これによりステンレス素材の持つ魅力を十分に引き出されています。  文字板に目を移すと、色調はシルバーで、ほぼケース、バンドと同色であり、このモデルを語る上での大きな特徴と言えます。文字板をケース、バンドと色調においても一体化させることにより、流れるようなデザインの表現がより強まっています。  文字板上の表記も白印刷であり、同一トーンへのこだわりが表れています。形状もさることながら、色調に関しても流れを意識したデザインが大きな魅力となっています。

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ふくよかさ

 この時計は多くの機能を持っており、その多機能性ゆえに文字板の密度は高くなります。バランスよく整えられた各要素の配置は、多くの情報をわかりやすく、並列的にユーザーに伝えることを可能としています。  また、サブダイヤルの形状や色使いは、視認性に十二分に配慮されているのと同時に、多機能モデルならではの凝縮感とあいまって、視覚的にユーザーを楽しませる効果があります。  ケースは平面が少なく、張りのある曲面を主体に構成されています。それは、多くの古代文明でみられる豊穣を願う地母神像の母性的なふくよかさを連想させます。  パイロットウオッチというきわめて男性的なモデルのなかで母性を感じさせるところにこのモデルの意外性と個性があります。多機能をただ機能的にデザインするだけにとどまらず、文字板のレイアウトやケース形状などのモデル全体の佇まいを通して、万人が共通して持っているであろう根源的豊かさのイメージを呼び起こすようなデザインだと考えます。

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妥協のない職人のこだわり

 部品の一つ一つの形状・仕上げに気を配り、どれを取ってもそれぞれに職人のこだわりのようなものを感じる逸品です。  時字の形状やカット面/曜日の窓枠の独特なデザイン/日表示の拡大レンズ/ロゴ・マークのフォント/レイアウト/切分印刷の幅や長さ/ケース本体とベゼルの割り位置/面の取り方/ボックス型のガラス… 全てにおいて、妥協した点が見当たりません。  それら一つ一つを組み合わせ、腕時計という完成品になったとき、不思議と各々が主張し過ぎず、印象的で個性があるにも関わらず、何ともいえない上品さを醸し出しています。まさに匠の技です。

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かきたてる

 左右非対称なシルエットがもつ強烈なインパクトは、「手にとってみたい」という衝動をかきたてます。文字板に大きく配された深度計と9 時位置のセンサーは、「実際に海に潜ったら…?」という想像をかきたて、それらが結果として「欲しい」という気持ちをかきたてます。  本モデルは、そうしたユーザーの潜在意識を「かきたてる」と同時に、しっかりとその気持ちを受け止める機能性を有しています。腕時計に限らずどんな製品にも言えることですが、機能性だけを単純に追求していった場合、無味乾燥かつ没個性なモノが生まれてしまう可能性が存在します。本モデルは、ISO/JIS 規格や海中での視認性等といった様々な制約がある中で、機能性とアイコニックな外観の両立を見事に果たしていると言えます。  「マンボウダイバー」という通称が示すとおり、シルエットだけでそれと判別できるインパクトのある外観を備えながら、ダイバーズウオッチとしての機能は一切損なわれていません。実用性と魅力的でユニークな外観の両立という、真にデザイナーに求められる役割を見事に体現したモデルだと言えます。

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視認性

 命に関わるダイビングで使用されるダイバーズウオッチでは、防水性はもちろん、“視認性”が重要とされます。  本モデルは、世界初のエレクトロニクス水深計測機能を搭載。現在の深度や最大深度を計測できる他、水中で音が響きやすいアラーム機能まで付いています。ですが、やはり一番重要な情報は潜水時間です。深くなればなるほど、脳の判断力が落ちるため、瞬時に針を読み取れる“視認性”を追求し、時字や針のサイズ、形状、夜光の面積についても熟考されています。  まさに「ダイバーズウオッチのバイブル」と言っても過言ではない、先駆者的モデルです。