時を感じる

CITIZEN L AMBILUNA Collection

https://ms.citizen.jp/assets/L054ok のコピー

2024.08.07

シチズン エル は2016年より “サスティナブル“をテーマにした製品づくりを開始しました。“エシカル“なアプローチとジュエリーデザインを結び付けた新感覚ラグジュアリーウオッチとして、コンセプトを象徴するモデルを提案する企画が立ち上がりました。

 “エシカル”という言葉は、“倫理的”という意味もあり、サスティナブルよりも奥が深く哲学的です。当時はまだ一般的ではない“エシカル”の考えを広く知ってもらう「きっかけになるような時計」「心地よく自然を感じ、人を引き付ける」ものをつくりたいという想いがありました。そこから、ブランドアドバイザーの生駒芳子氏のご紹介で、他に類を見ない、驚きと心地よさが共存する作品をつくられている、建築家の藤本壮介氏にデザインアドバイザーをお願いすることになりました。1920 1280 最初の案まず、コンセプトを固めるために対話を重ね、エコドライブの動力である「光」と「時間」との関係をともに考えていきました。そして“光そのもののような時計=有機的な光を持った生命体”というキーワードを導き、藤本氏よりイメージを落とし込んだラフ案が提案されました。

1920 1280  Image生命の源になる「光」と、本来かたちがない「時」を感じさせる、新しい時の概念を提唱しました。光を内包するような、ふんわり曇ったガラスが象徴的です。普遍的な美しさを持つ「光」の表現と、 “エシカル”な生産背景が結びつくことで、新しい腕時計の価値観と、自然への想いを宿した時計を提案できるのではないかとワクワクしながら、具現化に向けてスケッチ作成をすすめました。

1920x2880-16AW-GL-01デザインをまとめていく上では、ミニマルな美しさや精神的なエレガンスが感じられることを目指しました。薄霧に包まれてやわらかく光る朧月をイメージしたサファイアガラスが、光のうつろいを表情豊かに感じさせます。ケースは温かい艶消しの仕上げにし、バンドは上品な光沢のある西陣テキスタイルで、時計全体がやさしい光で包み込まれたようなデザインです。

1920 1280 kg表現の要である曇りガラスの製作はとても困難でした。エコ・ドライブなので、光の透過率を確保することが必須条件ですが、針がうっすらと見えるデザインと透過率の両立が難しく、調整を繰り返しました。サファイアガラスは傷がつかない硬質なガラスですが表面の平滑度が高く印刷が載りにくかったためインクの種類や下地処理などに工夫を重ねました。

1920x1280 case ケースには軽く、耐メタルアレルギー性の高い純チタニウムを採用しています。女性のデリケートな肌や、使い心地への配慮をした安心して着用できる素材を採用しました。艶消しのチタニウムケースは曇りガラスと一体感をもった白さと丸みを帯びた形で、光造形3Dプリンターで形状を細かく確認して決定しました。薄くなめらかで、素材から感じられる着け心地の良さをとリンクする造形です。

1920 1280西陣ストラップは、京都の西陣織老舗「細尾」と光の揺らぎをイメージして織り上げたオリジナル生地を作成しました。銀糸とシルクが、優しい光に溶け込むような微細な輝きを放っています。加工性向上と強度維持のために、織り柄の修正や合わせる裏材との相性など細かい調整を繰り返しています。デザインとクラフトマンシップを融合させ、ミニマルでありながら、静謐な美しさの中にエレガンスを感じさせます。

1920x2880 手元

1920x2880 霧箱クラッチバッグやバングルもセットでデザインしています。クラッチバックのデザインは、世界のアート界が注目する作品をつくり続ける串野真也氏のデザインです。時計がバックにつけ外しできるアイデアは新しい時計の可能性や楽しみを提供しています。

このプロジェクトは藤本氏から提示されたものを具現化するだけではなく、シチズンのデザイナーからの提案も検討しながら進められ、双方向的なデザインワークとなりました。「このコンセプトはとてもかすかなものですが、とても明快です」と最初に藤本氏は語られていました。新しい要素が多く課題もたくさんありましたが、最初のコンセプトスケッチに託された想いをそのまま実現できるよう丁寧につくりたいと思いました。そして新しい表現への実験的な工程はとても楽しいものでした。発売からだいぶ時間がたちましたが、今もこの時計のユニークな表現は、見るたびに心に柔らかく新鮮な印象を残してくれます。

 

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https://ms.citizen.jp/assets/1R_時計4個 1920x1280 のコピー

自然を感じる

私が2016年の立ち上げから関わっているシチズン エルでは、サスティナブルな観点で、いろいろな取り組みを行ってきました。最近はリモートワークが増え、人々がよりリラックスした生活を求める中で、新しい女性の生活スタイルに合うものを作る必要性を感じていました。そして、次の新しいモノづくりを考えていたときに、バイオミミクリーという言葉に出会いました。

https://ms.citizen.jp/assets/099_12-07_L ムービングダイヤ_01

自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/100_12-08_L 漆玉_01

光を感じる時計

 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

https://ms.citizen.jp/assets/097_12-05_エクシード_01

SOLID FLOWER

 チタニウム製の時計。チタニウムはどことなくタフなイメージがありますが、この時計のデザインは繊細さからアプローチされています。初めて見たときは、まるでミニチュアの花のような印象を受けました。  デザインの中に、複数の曲線がダイナミックに用いられています。葉のような形をしたバンド、花の形をしたりゅうず、文字板にも花の模様が浮かんでいます。ローマ数字の時字はエレガントな雰囲気を時計に与え、女性をターゲットにデュラテクトプラチナが施されています。これらの要素は、この時計の華やかで女性的な雰囲気の美しさを際立たせると同時に、チタニウムの硬質さ・軽量さという利点を持ちながら、タフなイメージを軽減させます。  さながら、「ソリッド・フラワー」とでも呼ぶべきものがこうして出来上がりました。