自然を感じる

CITIZEN L  ambiluna

https://ms.citizen.jp/assets/1R_時計4個 1920x1280 のコピー

2024.03.26

私が2016年の立ち上げから関わっているシチズン エルでは、サスティナブルな観点で、いろいろな取り組みを行ってきました。最近はリモートワークが増え、人々がよりリラックスした生活を求める中で、新しい女性の生活スタイルに合うものを作る必要性を感じていました。そして、次の新しいモノづくりを考えていたときに、バイオミミクリーという言葉に出会いました。

バイオミミクリー

バイオミミクリーバイオミミクリーとは自然界の仕組みから学んだことを技術開発に活かすことをいいます。直訳すると『生物模倣』となります。オナモミの実を模倣して作られた「マジックテープ」、蓮の葉のように汚れをはじく「ヨーグルトの蓋」など、見渡せばバイオミミクリーの製品は身のまわりにすでにたくさんありました。時計にバイオミミクリーを取り込んだら今までにない新しい価値が生み出せるのでは?という発想からアイデアの模索が始まりました。

3 ブレインストーミング 1920x1280

まず、ブレインストーミングをおこない、腕時計に必要な機能を絞り込みました。装着感、汚れにくさ、丈夫さ、美しさ、安全性などの観点から使用できそうなバイオミミクリーの技術を調べていきました。アイデアを出し合い、今回のモデルは「心地よい装着感」を叶えたい、ということで生物学者の福岡伸一先生へバイオミミクリーのアイデアのご協力をお願いしました。

センスオブワンダー

 

自然界ではデザインが機能を

いつも一歩上回っている

 

当初は、着け心地の良さという機能的な部分でバイオミミクリーを取り入れたいと考えていましたが、福岡先生との対話の中でとても気になる言葉がありました。それは、「自然界ではデザインが機能をいつも一歩上回っている。」 ということについてでした。この顕著な例として特に強調されていたのは生物特有の色についてです。

Adobe Stock 692898206 のコピーあまりにも美しすぎる、あまりにも鮮やかすぎる、という一見少しデザインが過剰なところが自然のおもしろさである。自然界ではデザインが機能をいつも一歩上回っている。過剰な色や形には生命として意味があり、人間から見れば一見無駄にも思えるデザインの多様性が自然には存在する。それこそがセンスオブワンダーなのだ。というお話でした。

Kouzousyokuこの先生の一言に感銘を受け、美しい文字板表現をモデルのポイントにしたいと考えました。その表現の手段として”構造色”を採用することになります。ちょうど富士フイルムがインクジェットプリンターによる構造色の開発をすすめており、ご協力を得て文字板デザインの検討を始めました。最初に構造色のサンプルを見たときは、とても華やかで、まさに蝶がまっているような表情に驚きました。時計にどんなふうに落とし込めるだろうかと心配でもありましたが、とても奥行きのある新しい発色の文字板となりました。

7 Dial 1920x1280文字板は、古来から地球を構成する四つの要素とされる”地水火風”を繊細かつ神秘的に表現したいと思いました。

名称未設定 1見るたびに違う表情を楽しめるのがこの時計の面白さです。構造色は色素で色付けしているのではなく、微細構造を形成するインクの技術により、構造色を発現させるものです。光が干渉することで生まれる美しい色合いが神秘的であり、駆動に光を必要とするエコドライブとの親和性も感じています。

9 ニットバンド 1920x1280 ーニットバンドの編地もバイオミミクリーを参照した多孔構造のデザインです。通気性がよく、自分で洗うこともでき、通常の革バンドよりもずっと快適なものになりました。ニットは島精機のホールガーメント技術を採用しています。ニット素材を扱うのは初めての経験で、撚る糸の種類の選定から参加させていただきました。どの糸を混ぜるかで生地の強さや厚みが変わってきます。ニットメーカーに何度も試作をお願いし、強度や厚み、弾力の兼ね合いの検証を重ね、最適なものを探りました。

10 時計 夕日背景 1920x1280有機的につながる自然の美しさ、不思議さを表現する文字板の構造色の個性を引き立てるよう、ケースはシンプルなデザインとしました。新しい触感のニットバンドが程よいリラックス感をもたらします。様々なシーンで、ふと自然を感じるような存在になってくれたら嬉しいです。

 K7 A8283生物学者の福岡伸一先生、シチズン エル ブランドアドバイザーの生駒芳子氏にはモノづくりのヒントをたくさんいただきました。生命やアートなど、熱く語られるお二人の新しい物事への価値観にいつも驚かされ、時計を超えてできることは十分にあると感じられるプロジェクトでした。

WATCH

CREDIT

RELATED

https://ms.citizen.jp/assets/1

飾るのではなく、削ぎ落とす。

シリーズエイトは、もともとは2008 年にデビューしたコレクションです。当時としては斬新な8 体構造のケースが特徴で、都会的でモダンなコンセプトを基調としていました。2014 年にひとまず幕を閉じ、それから8 年目を迎えた2021 年に再始動したのが、新生Series 8 です。シンプルかつモダンに。飾るのではなく削ぎ落とす。「引き算の美意識」と呼ばれるデザインコンセプトを継承しつつ、いま求められるスペックとたたずまいを兼ね備えた機械式のブランドとして、リスタートをしています。

https://ms.citizen.jp/assets/IMG0213-06_re  のコピー

多くの機能をシンプルに

プロマスター アクアランドは水深計搭載のダイバーズウオッチシリーズです。「アクアランドの“継承”と“進化”を感じさせるダイバーズウオッチを作る」という企画のもと、いま一度プロマスターの基本コンセプトに立ち返り、多くの機能をシンプルに表現した本格ダイバーズウオッチの開発を行いました。ミニマルなデザイナーズウオッチや、インパクト重視のデザインなどが混在する幅広い市場において、過酷な環境下にも耐えることができるよう機能性/耐久性/安全性を徹底的に追求した、新しいスタンダードとも言えるモデルです。高い機能性とデザイン性が評価され、2018年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

https://ms.citizen.jp/assets/L054ok のコピー

時を感じる

シチズン エル は2016年より “サスティナブル“をテーマにした製品づくりを開始しました。“エシカル“なアプローチとジュエリーデザインを結び付けた新感覚ラグジュアリーウオッチとして、コンセプトを象徴するモデルを提案する企画が立ち上がりました。

https://ms.citizen.jp/assets/NB6060-58L_IMG06 のコピー

ダイナミックな形状と緻密な仕上げ

シリーズエイトは、ブランド名になぞらえて8から始まる3桁の数字がモデル名になっています。2桁目がポートフォリオを表しており、数字が小さいとモダンで、数字が大きくなるにつれてスポーティになっていきます。870、880に続く、シリーズエイトのコレクションの中で最もスポーティなモデルとなる「890」の開発が今回のテーマでした。