「測る」という機能を際立たせて無駄を省いたシンプルさ

RECORD MASTER

https://ms.citizen.jp/assets/085_11-08_レコードマスター_01

 1967 年から5 年間ほど製造された、クロノグラフ機構を持つ中三針手巻き腕時計。当時の広告資料を見ると、若い世代に向けた商品として発売されたようです。
 時計は手巻から自動巻へと変化する只中にあり、自動巻クロノグラフもレコードマスター発売の2 年後には他社から発売されました。
 製造されていたのは短い期間ではあったようですが、正統派のモデルであり、細部まで配慮の行き届いた繊細なつくりの美しさが印象的です。

085_11-08_レコードマスター_02中三針の手巻きクロノグラフ。繊細な文字板表現。特に1/5切分部分。ケースはシャープなラインで構成され、すっきりとした印象。

085_11-08_レコードマスター_03ケースラグ先からサイドまで繋がる美しいシャープな斜面。

085_11-08_レコードマスター_04溝を切った12 箇所の時字は飾り気がなくシャープな形状。視認性のよいアラビア数字や繊細な1/5 切分とあわせ、正確な時を測るための要素が詰め込まれています。

085_11-08_レコードマスター_05シンプルで全く飾り気のない形状のりゅうずとプッシュボタン。

085_11-08_レコードマスター_08すっきりとしたサイドビュー。全てミラー仕上げでも見るに耐えうる面品質を保っています。ケース裏側はサイドから見たケースの厚みを軽減するためか、逆アールの面取りで軽さを出しています。

085_11-08_レコードマスター_06ねじこみ式防水裏ぶた構造を採用。プッシュボタンはストップウオッチのように押しやすい蟹目タイプ。

085_11-08_レコードマスター_07針形状は山型カット形状のドーフィン針。分針、秒針の細い先端は切分までしっかりと届き、計測しやすい視認性を保ちます。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

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 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

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最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。