制約を個性に

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https://ms.citizen.jp/assets/075_10-07_初電波_01

 多局受信型電波時計のデザインの特徴は、文字板中央に配置されたアンテナと、それを包み込む分厚いカットガラスとセラミックベゼルです。世界初の腕時計に拘り開発したCal. 7400 の受信アンテナの制約があったからこそ、この唯一無二のフォルムが生まれたのでしょう。
 もし、アンテナの制約がなく、世界初の多局受信型電波時計を自由にデザインできたとしたら、このフォルムが生まれていたでしょうか?
 このフォルムが生まれた背景には、より正確な時間を刻む腕時計を生み出したいという情熱と、多くの制約があってもそれを乗り越える方法を想像し、発明する、シチズンの信念があったのです。このモデルのデザインは、「技術と美の融合」が具現化された象徴的な事例と言えます。
 制約を逆手に取り、オリジナリティのある独創的なフォルムを生み出すデザイン手法は、過去のモデルにおいても用いられてきました。制約が大きければ大きい程、シチズンでは独創的なモデルが生まれてくるはずです。

075_10-07_初電波_02ケース(文字板)中央に電波受信用のアンテナを配した唯一無二のデザイン。繊細な針や文字板とアンテナのバランスが絶妙なデザインです。

075_10-07_初電波_03ガラスとセラミックベゼルでケース厚の44.4%を占める独特のフォルム。世界初の多局受信の電波時計を生み出そうとした、シチズンならではのアプローチから生まれたデザインだと言えます。

075_10-07_初電波_04ケース厚の44.4%を占めるガラスとセラミックベゼル。この独特のケースバランスとカットガラスの屈折を利用したフォルムが、このモデルをより一層特徴づける要素です。

075_10-07_初電波_05円球面カットと円筒面カットを組み合わせたサファイアガラス。プレスによってアンテナ収納部を加工しています。

075_10-07_初電波_06りゅうずとプッシュボタンは、全て同寸法の仕上げ違い。

075_10-07_初電波_09文字板の円や扇形の形状を極細のスリットで表現。この繊細なスリットが精緻感を醸し出しています。

075_10-07_初電波_07針は、限られた長さの中で視認性を上げるデザイン処理がされています。また、左の2 本の月針と日針は、50μm の幅違いだが座径が同じであり、重なる際に1 本の針のように見せる工夫がされています。

075_10-07_初電波_08オリジナルのローマ数字フォント。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

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 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

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自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

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最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。