意志ある逸脱

ALTERNA Radio-Controlled

https://ms.citizen.jp/assets/052_06-10_オルタナ TV_01

 眺めていると、まるでオーディオ機器か何かを見ているような、そんな感覚に捉われます。ウォームグレーのガラスを通して見えるフェイスは新しさの中にもノスタルジーを感じさせる温かみがあり、ケース横のプロフィールに与えられた、もっさりとした印象に見えないギリギリの大きなアールや、ケーストップに施された粗めのホーニング仕様と合わせて、デジタル寄りのデザインを冷たく見せないことに成功しています。
 電波時計という新しい技術に相応しいスタイルとして、また、若者をターゲットとするスタイルとして、この方向性を選んだのでしょう。時計でありながら時計然とデザインされてはおらず、そのせいか、もう18 年前の商品ですが今でも古びて見えることがありません。時計の世界だけでなく、常に広い視野を持ってデザインの視点から様々なプロダクトを眺め、ウオッチデザインの世界を俯瞰して見るスタンスの大切さを教えてくれ
ます。
 デザイナーの作家性とオルタナシリーズが目指す世界観のマリアージュを探るなかから生まれた、当たり前からあえて逸脱するスタイル。それがこの時計の確かな魅力となっています。

052_06-10_オルタナ TV_02スモークガラスを使ったTVスクリーンのようなケース。ガラス外周に黒印刷を施して縁無し構造のように見せています。

052_06-10_オルタナ TV_03シリンダーカーブのガラスがぽっこりと出っ張っています。

052_06-10_オルタナ TV_04文字板、ガラス裏面、針の印刷は全て白プリントで、カラーガラス越しに見るとアイボリーに変わります。

052_06-10_オルタナ TV_05独特のカクカクしたフォントが古めかしい雰囲気を醸し出します。機能表示も個性的なグラフィックで遊び心に溢れています。

052_06-10_オルタナ TV_06革バンドは仕立て方が独特で拘りが窺えます。

052_06-10_オルタナ TV_072軸以上に傾けないアングルの方がこのモデルには映える気がします。時計っぽく見えないのが魅力だとすると納得です。

052_06-10_オルタナ TV_08色付きガラスや、かなり強めのホーニングをケースに用いた辺りが新しい表現。見る人の時計に対する概念を試すスタイルと言えます。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

https://ms.citizen.jp/assets/100_12-08_L 漆玉_01

光を感じる時計

 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

https://ms.citizen.jp/assets/099_12-07_L ムービングダイヤ_01

自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/098_12-06_エクシード ユーロス_01

最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。