意志ある逸脱
眺めていると、まるでオーディオ機器か何かを見ているような、そんな感覚に捉われます。ウォームグレーのガラスを通して見えるフェイスは新しさの中にもノスタルジーを感じさせる温かみがあり、ケース横のプロフィールに与えられた、もっさりとした印象に見えないギリギリの大きなアールや、ケーストップに施された粗めのホーニング仕様と合わせて、デジタル寄りのデザインを冷たく見せないことに成功しています。
電波時計という新しい技術に相応しいスタイルとして、また、若者をターゲットとするスタイルとして、この方向性を選んだのでしょう。時計でありながら時計然とデザインされてはおらず、そのせいか、もう18 年前の商品ですが今でも古びて見えることがありません。時計の世界だけでなく、常に広い視野を持ってデザインの視点から様々なプロダクトを眺め、ウオッチデザインの世界を俯瞰して見るスタンスの大切さを教えてくれ
ます。
デザイナーの作家性とオルタナシリーズが目指す世界観のマリアージュを探るなかから生まれた、当たり前からあえて逸脱するスタイル。それがこの時計の確かな魅力となっています。