面構成の“バランス美”

WORLDTIMER

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 この「ワールドタイム」は1970 年代に海外市場向けに販売された、70 年代の特徴である切削加工の美しさがよく分かるモデルです。
 70年代は“ドルショック”や2度の“オイルショック”があり、工業製品や市民生活にも多大な影響を及ぼした歴史的な出来事が多くありました。
 工業製品に目を移すと、多くの日本製品が海外へ輸出されたのもこの時代で、シチズンも海外向けの時計としてこの「ワールドタイム」を生産して競合他社が多数存在している海外市場へと新たな戦いを挑んでいきました。
 デザインについていえば、シンプルな切削形状を持つ時計本体と、機能である都市表記を回転リングに入れた“シンプル”と“複雑”が絶妙なバランスでデザインされています。
 時計本体の上面には潔く円錐切削されたシャープな面とヘアライン処理、革バンドやメタルバンドと馴染むラグ先端部には力強く大胆な斜面切削加工が施されていて、バランスの良さには目を見張るものがあります。
 現在ではあまり多くはない、シンプルで機械加工が前面に見えてくる技法で時計を作りこむ所に、逆に新鮮さを感じます。
 この時計を生み出した創作者達の潔い美的感覚、バランス感覚には脱帽するばかりです。

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このモデルはまず、ケースの円弧状のデザインが特徴的です。角ばったボックスガラス、薄いベゼルを使いシャープな印象。角ばったボックスガラスと切削を重ねたケースが綺麗な反射面を作っています。

047_06-05_ワールドタイム_03切削加工がともかく前面に見えてくるシンプルなケース形状。ガラスが角ばったボックス状になっており、構造体として力強い印象を与えます。
裏ぶたは丸形状で、断面も平らな形状。レーザーではなく型による刻印があり、パラウォーターの文字も読み取れます。

047_06-05_ワールドタイム_04当時の革バンドが無くなった為か、ステッチが入る一般的な物が装着されています。革素材がやや表面の粗い物が取り付けられていて武骨感があります。

047_06-05_ワールドタイム_05裏ぶたは丸形状で、断面も平らな形状。レーザーではなく型による刻印があり、パラウォーターの文字も読み取れます。

047_06-05_ワールドタイム_08この時計は面構成バランスがともかく美しいと言えます。正面を見るとシンプルな形状で加工されているように見えて、時計をあらゆる方向から眺めてみると“切削加工美”“バランス美”“素材の積層美”が確認できます。

047_06-05_ワールドタイム_06ワールドタイムというだけあり、しっかりと機能が詰め込まれた文字板デザイン。各インデックスの仕上げも綺麗に切削加工で表現され、大変美しい処理。

047_06-05_ワールドタイム_07ややスポーツ形状をしているりゅうず。ケース合い面には大きめの斜面カットが入れられているのが特徴。CTZのマークが凸形状の型なのが凄い所です。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

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