Tomoki Koyama

DESIGNER

https://ms.citizen.jp/assets/tomoki-koyama
名前
小山 友樹
専門
プロダクトデザイン
地域
日本
経歴
ハードウェアデザインに憧れ美大に進学、卒業後にシチズン時計に入社。先ずOEMデザインを担当し国内や欧米向けの商品でデザイン経験をスタートさせる。その後、シチズンブランド国内向けデザインを担当し各種サブブランドの作業を経験。北米のBULOVA向け商品、北米のシチズン向け商品も多く担当した。現在はシチズングローバルGr.に所属、主にプロマスターのデザインを担当している。
趣味(ハマっているもの)
ドライブ、サイクリング(ロードバイク)、映画鑑賞、モータースポーツ観戦(F1,WRC)
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切削加工“美”

 この「クリストロン メガ」は1976 年に発売されたモデル。当時、今のような高精度なCADをベースにした切削機器はなく、外装部品の製造には多くの熟練工達の“技”が生きていたのだろうと容易に想像することができます。  実際にこの時計の形状や各部位を調べ上げていくと、小さな部品にまでしっかりとした加工と仕上げが施されています。時字を1つとってみても、加工精度が必要な小さな段差、視認性向上のために設置されたであろう「黒印刷」など、一切の妥協は感じられません。  ケースの形状をよく見ると、各部位に大胆なアール形状、直線が美しく映える鋭角な切削形状 等が使われており、切削による“美”を理解した上で製造していたのだろうと感じられます。ケースラグ上面、文字板上面には金属の型を使った梨地風の模様が施されており、ステンレス表面の模様が生き生きとして見えます。まるで模様が「見てくれ見てくれ!」と語りかけているようです。

https://ms.citizen.jp/assets/024_04-01_スーパーデラックス_01

誠実さの“ 真摯美 ”

 「スーパーデラックス」は1958年に発売されたモデル。1950年代(昭和25~34年)の日本の工業製品を調べてみると、現在も広く市民に使われ続けている生活に密着した工業製品が多く見られます。そんな時代にこの時計は世に送り出されました。  シンプルで実用的なルックスをしており、過度な装飾はケースや文字板、小部品からは見られず使い勝手も良さそうで、時代の影響をしっかり受けているように思えます。あえて挙げるのならばボックス状のガラス、ロケットの先端のようなりゅうずとカーブ形状の裏ぶたの3 箇所は、程よく個性を演出しています。細いケースラグ、細いベゼルや大径の文字板など、細部の作りこみの美しさには驚かされます。  文字板外周部には曲げ加工が施され、ボックス状のガラスとカーブ形状の裏ぶたとが組み合わさり、「薄さ、性能、加工美」をしっかりと体言しています。シチズンの真摯な姿勢が製品にしっかり宿っており、このまま現代でも十分販売できそうな魅力を持っています。文字板曲げ加工の反射も、柔らかく心地が良いものです。  この「スーパーデラックス」からは、真摯な作りこみと柔らかい人肌のような温かさが感じられます。

https://ms.citizen.jp/assets/047_06-05_ワールドタイム_01

面構成の“バランス美”

 この「ワールドタイム」は1970 年代に海外市場向けに販売された、70 年代の特徴である切削加工の美しさがよく分かるモデルです。  70年代は“ドルショック”や2度の“オイルショック”があり、工業製品や市民生活にも多大な影響を及ぼした歴史的な出来事が多くありました。  工業製品に目を移すと、多くの日本製品が海外へ輸出されたのもこの時代で、シチズンも海外向けの時計としてこの「ワールドタイム」を生産して競合他社が多数存在している海外市場へと新たな戦いを挑んでいきました。  デザインについていえば、シンプルな切削形状を持つ時計本体と、機能である都市表記を回転リングに入れた“シンプル”と“複雑”が絶妙なバランスでデザインされています。  時計本体の上面には潔く円錐切削されたシャープな面とヘアライン処理、革バンドやメタルバンドと馴染むラグ先端部には力強く大胆な斜面切削加工が施されていて、バランスの良さには目を見張るものがあります。  現在ではあまり多くはない、シンプルで機械加工が前面に見えてくる技法で時計を作りこむ所に、逆に新鮮さを感じます。  この時計を生み出した創作者達の潔い美的感覚、バランス感覚には脱帽するばかりです。