「ながれる」と 「きらめく」の対比

GLORIOUS CITIZEN

https://ms.citizen.jp/assets/028_04-05_グロリアスシチズン_01

 時計デザインの文法に沿って仕立てられた一見シンプルなモデルですが、見る角度によって意外なほどダイナミックな一面を見せます。とろんと光るのはケース上面のミラー円球面、プロフィールに沿った大きな斜面のヘアラインは白からグレーまでのトーンで抑えめ、サイドの1mm 幅の垂直面と幅広の下斜面はシャープに光が流れるミラー面、ラグ先は3 つの面取りが施されキラリときらめきます。とりわけ、光が流れるケースサイドのラインと、光がきらめくラグ先端の面取りのコントラストは、この時計が纏う光を上手に演出しています。
 ロゴマーク、山型カットの時字と針、窓枠の複雑な面取りにもきらめきがあり、マットな文字板とのコントラストが際立つかのようです。
 また、裏ぶたとりゅうずにはそれぞれ別体パーツ、文字板には植マークが2 つ、尾錠に至ってはロウ付けの3 体構造と、拘りのディテールが満載。当時このモデルに賭けたシチズンの意気込みが垣間見えるかのようですが、主張し過ぎないのも大きなポイント。そのことがかえって光の効果に視線を向かわせる要因になっています。

028_04-05_グロリアスシチズン_02センター部分が大きく張り出していますが、角度のある斜面と細縁ベゼルによって重く見えません。

028_04-05_グロリアスシチズン_03日本刀のようにも、スポーツカーのボディのようにも見えてくる、特徴的なサイドビュー。

028_04-05_グロリアスシチズン_04繊細さとダイナミックさを合わせもった造型。カン奥は面取りされていて、ストラップを奥まで入れる工夫。

028_04-05_グロリアスシチズン_05Glorious CITIZEN 専用のマーク入りの美錠は高級感漂うこだわりの造り。

028_04-05_グロリアスシチズン_06凝った造りの植窓や植マーク、山カットの植字がシンプルな中でキラリと光る文字板。

028_04-05_グロリアスシチズン_09サイドのラインとラグ先端の面取りが特徴的なケース。仕上げを巧みに変え、光が流れたり、きらめくコントラストが大きな魅力に。

028_04-05_グロリアスシチズン_07ケースのボリューム感と比較すると、針と時字が大人しく全体のバランスをとっています。

028_04-05_グロリアスシチズン_08裏ぶたやりゅうずには“Glorious CITIZEN”のGCマークが銘板に施されています。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

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 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

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自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/098_12-06_エクシード ユーロス_01

最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。