「ながれる」と
「きらめく」の対比
時計デザインの文法に沿って仕立てられた一見シンプルなモデルですが、見る角度によって意外なほどダイナミックな一面を見せます。とろんと光るのはケース上面のミラー円球面、プロフィールに沿った大きな斜面のヘアラインは白からグレーまでのトーンで抑えめ、サイドの1mm 幅の垂直面と幅広の下斜面はシャープに光が流れるミラー面、ラグ先は3 つの面取りが施されキラリときらめきます。とりわけ、光が流れるケースサイドのラインと、光がきらめくラグ先端の面取りのコントラストは、この時計が纏う光を上手に演出しています。
ロゴマーク、山型カットの時字と針、窓枠の複雑な面取りにもきらめきがあり、マットな文字板とのコントラストが際立つかのようです。
また、裏ぶたとりゅうずにはそれぞれ別体パーツ、文字板には植マークが2 つ、尾錠に至ってはロウ付けの3 体構造と、拘りのディテールが満載。当時このモデルに賭けたシチズンの意気込みが垣間見えるかのようですが、主張し過ぎないのも大きなポイント。そのことがかえって光の効果に視線を向かわせる要因になっています。