まっすぐさ

ANA-DIGI PW

https://ms.citizen.jp/assets/013_02-02_アナデジ_01

 針が回転するアナログ時計が主流だった時代から、デジタル表示が普及すると、時計デザイナーに求められる能力は、よりグラフィカルなものになりました。アナログとデジタルの複合モデルとなると、その両方の持ち味を引き出さなければならないため、難易度はさらにあがります。
 デジタル表示はセグメント文字を有するため、直線的で角ばったフォルムになるのは必然ですが、本モデルは特に四角いデザインをしています。定規とコンパスで全部書いたのではないかと思うほどにまっすぐな線のオンパレードですが、それが一貫することでまとまりを生み出しています。デザイン作業において動かせないのは、ムーブメントに内蔵されたデジタルの数字。その直線的な数字の雰囲気に全体を合わせることで、違和感の無い、統一されたデザインに仕上げました。ピッ、ピッっとステップ運針する秒針の直線的な動きが醸す精度感に、視覚効果としての直線が持つスピード感があいまって、まっすぐに機能性を重んじる様子がうかがわれます。

013_02-02_アナデジ_02直線を多用した工業的なデザイン。ステンレスと黒のモノトーンを基調に力強く描かれたスポーツ調。

013_02-02_アナデジ_03重心を高く置き、ベゼルのないフラットなケース上面がそのままバンドに流れ込むシンプルな設計。

013_02-02_アナデジ_04直線的要素でまとめられた四角い文字板。数字も四角い。

013_02-02_アナデジ_05薄型の金属バンドは上面もフラットで直線的。縦割りをしない横一列の潔さ。

013_02-02_アナデジ_06直線と真円で構成されたりゅうず、ボタン。

013_02-02_アナデジ_07フラットな上面が、そのままバンドにつながるシンプルさ。四角い飾り銘板。

013_02-02_アナデジ_08角ばったフォントたち。デジタル時計のセグメント数字と違和感が生じないように配慮されています。

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レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

https://ms.citizen.jp/assets/100_12-08_L 漆玉_01

光を感じる時計

 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

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自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/098_12-06_エクシード ユーロス_01

最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。