Shuji Saitoh

DESIGNER

https://ms.citizen.jp/assets/shuji-saitoh
名前
斎藤 修司
専門
プロダクトデザイン
地域
日本
経歴
造形学部でインダストリアルデザインを学び、卒業後シチズン時計入社。特販部門へ配属。OEMウオッチのデザイン、量産展開業務に携わる。主に欧米向けモデルのデザインを担当。海外駐在を経て、シチズンブランド、マルチブランドのデザイン開発業務に携わることとなり、現在はデザイン部門の管理関係業務を担当。
好きなこと
自然散策、動植物観察
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流れの中にあるリズム または流線型であること

 視覚的、また物理的にも腕への装着感の高さを感じさせるデザインになっています。  バンドからケースにかけて、流れるようにラインがつながっています。しかしそれは単調なリズムで終わっていません。ケースに流れ着いたとき、突然テンポを変えています。そのことで、単純なフルフローデザインで終わることなく、ケースの存在感もしっかり表現されています。  全体の仕上げを見てみると、両サイドのみミラー仕上げにし、大きな面を占めるセンター部を12時 - 6 時ヘアラインとしています。これによりステンレス素材の持つ魅力を十分に引き出されています。  文字板に目を移すと、色調はシルバーで、ほぼケース、バンドと同色であり、このモデルを語る上での大きな特徴と言えます。文字板をケース、バンドと色調においても一体化させることにより、流れるようなデザインの表現がより強まっています。  文字板上の表記も白印刷であり、同一トーンへのこだわりが表れています。形状もさることながら、色調に関しても流れを意識したデザインが大きな魅力となっています。

https://ms.citizen.jp/assets/051_06-09_E210_01

要素の表現

 このモデルの中心にあるものは、特殊性のある“多機能”という“要素”だと思います。  “要素”をデザインの観点からどのように表現することができたか。それがこの腕時計の持つ完成度に表れていると思います。  充電量表示を扇表示にし、その中心部を12 時時字として機能させるといった構成は特異であり、このモデルがもつ魅力のひとつです。同時に、多くの要素がお互いに干渉しあわないよう文字板、リング上にレイヤー、面構成により配置される工夫が施されています。  “スポーツ”という言葉を表層的にカタチとして表現するのではなく、使用状況を想定し必要以上に凹凸構成をしないなどといった作りこみもなされています。  メタルバンドには、連結駒にミラー仕上げの交互使いが施され、躍動感のある個性が演出されています。また、りゅうずとプッシュボタンガードを別体で仕上げ違いにすることで特徴づけ、プッシュボタンの形状とともにクロノグラフの機能を使いたくなるような仕掛けがなされています。  “機能”“スポーツ”という“要素”を本質を見据えて構成、表現したデザインが大きな魅力としてあらわれた、プロマスターらしいモデルとなっています。

https://ms.citizen.jp/assets/057_07-02_超硬_01

歪みがない

“孤高”“煌めき”そして“キレがあり”“穢れがない”。この時計を手に取ると、そんな言葉がイメージされます。  ケースの、磨き上げられた面とその構成。一瞬、触れるのを躊躇うほどの気高さがここにはあります。各々の面が平滑であることにこだわった結果、まるで宝石のようにキラキラと輝くケースとなったのです。考え抜かれた面角度による表現で、光と影のコントラストの美しさが際立っており、品格が漂っています。これほどに高貴なイメージが表現できているのは、そこに一切の歪みが存在していないからでしょう。  歪みを許さない、そのために使われた素材が超硬合金です。厳選された素材を使い、入念な仕上げを施した結果なし得た精緻な面品質、そこには本物の機能美が備わっています。  文字板に目を移すと、色調は漆黒。仕上げは塗膜研磨により、ここでも全く歪みの無い面が表現されています。研ぎ澄まされた感触が伝わるかのような鋭敏さです。  針と4か所の時字に関してもダイヤカットが施され、ケースと同様にキレのある、煌めいた表現となっています。  “つくりの良さ”“質の良さ”に裏付けられた“洗練された美と個性”がここにあります。

https://ms.citizen.jp/assets/076_10-08_フルメタル電波_01

指でなぞるという事

 時計を上から見るとわかりますが、ケース、バンドがフルフローのデザインでまとまっており、バンドのラインが滑らかにケースのラインへと繋がっています。いわゆる4 本足のケースではなく、メタルバンド専用のケースです。このことにより、流れるような表現が可能となっています。  ケース、バンドがそれぞれ違う趣で個性を主張するのではなく、一体となって一つの外装としての個性を表現しています。ベゼルも細縁で、あえて装飾は施していません。ゆえに文字板の情報を最大限伝えることが出来ています。また、時計を横から見た時にも流れるようなラインで構成されていることがわかります。ベゼルの高さも抑えられており、大きな段差もないため流れを遮っていません。  ケース、バンドの3 時- 9 時断面はなだらかな山形状となっています。バンドに関しては中駒を一段低くすることにより、厚さを感じさせません。このような形状により、視覚的にも物理的にも腕への高い装着感が実現できています。  このデザインの持つ滑らかな繋がり。時々表面を指でなぞってその抵抗のなさを楽しみたくなります。“時計を身に着けるとはどういうことか”という問いかけに対する一つの答えがここにあります。