Toshihiko Kita

DESIGNER

https://ms.citizen.jp/assets/toshihiko-kita
名前
喜多 俊彦
専門
プロダクトデザイン
地域
日本
経歴
雑貨メーカーでデザインに携わった後、シチズン時計に入社。シチズンブランドの欧州向けのデザイン、BULOVAブランドで北米および欧州向けのデザインを担当。現在は、主にシチズンブランドのPROMASTERのデザインを担当。
趣味
アウトドア
https://ms.citizen.jp/assets/20230623_3TamaProject_in BS のコピー 3

イノベーションの引火点

三多摩プロジェクト(仮)は、デザイン誌AXISの呼びかけから始まりました。AXISのディレクターが増刊号の取材で西武線に乗る機会が多く、改めて地図を見ると、ブリヂストン(小平)、シチズン時計(田無)、日立製作所(国分寺)の3社が多摩地域の近いエリアにあることに気づかれたそうです。地理的に近い異業種の企業が協力することで、新たなアイデアの創出や地域の課題解決につなげられるのではという目論見です。第一回はブリヂストンで開催され、第二回はシチズン時計、そして第三回では日立製作所で行われました。ちなみに、プロジェクト名は具体的な目標が決まるまでは(仮)表記としています。

https://ms.citizen.jp/assets/019_03-01_クリストロンソーラーセル_01

素材の良さを引き立てる、丁寧なデザイン

腕時計の駆動エネルギー源に太陽電池を使用した、エポックメイキングなモデルであるが、デザイン的には過度な強調や装飾も無く、丁寧にパッケージングされています。 おそらく、当時の技術ではソーラーセルを隠すことができないという制約の中、逆転の発想でこのような文字板のデザインに落とし込んだのでしょう。ソーラーセルがむき出しの大胆さが魅力となっています。文字板に対し、ベゼルは12 時- 6 時方向にアクセントを加え、ケースはバンドとのつながりやラグの落とし具合など細かなバランスを整える程度に留めることで、文字板をより魅力的に感じさせるバランスに落とし込まれてい ます。 デザイナーは料理人に例えられることがありますが、難易度の高い食材の個性を見事に生かした好例と言えます。素材をそのまま生かしたという点で、どこか和食に近くもあります。

https://ms.citizen.jp/assets/040_05-11_スーパーチタニウム_01

素材・技術の特性を活かす

この時計には2 つの重要なポイントがあります。1 つはチタニウム素材であること。もう1つは文字板が金属でできていながら光で発電して動くということです。 チタニウム素材では形状のエッジを出すことがステンレスに比べて難しく、魅力が半減してしまうことがよくありますが、有機的な形状と大胆なミラー仕上げによってその難点を克服しています。 文字板は3つのサブダイヤルのみで光を受けて発電し動力とすることで、それ以外の部分への金属の使用を可能としました。金属文字板に独特の加工を通じて魅力をさらに高めています。 チタニウム素材の大胆なミラー仕上げと金属特有の魅力を持つ文字板により、総合的にまとまったデザインにすることで消費者の目に届きやすいよう工夫がなされています。 パッと消費者の目に留まり、分かりやすく魅力を伝える商品となっています。

https://ms.citizen.jp/assets/060_07-05_シリーズ8_01

見せずに、魅せる

 華美な飾りがなく、削ぎ落とした引き算のデザイン。それゆえに、大胆さと繊細さが引き立てら れているモデルです。  各パーツのつなぎ目やビスを見せない構造と精巧な造りにより、パッと見ただけでは8 体構造だと分かりません。ラグは構造を生かした、垂直に切り落とされた鏡面加工の潔い大胆な形状になっており、美しいエッジが際立ちます。  複雑な構造をアピールするモデルは複数ありますが、あえて見せないこだわりが、大人の色気を感じさせます。

https://ms.citizen.jp/assets/096_12-04_カンパノラ_01

美の融合

 「宙空の美」と「日本の美」がうまく融合されている、魅せるモデル。  職人の手作業による漆塗り+塵地螺鈿、立体的な文字板構成、ムーンフェイズなど複雑な要素が多くありながら、過度な装飾性は感じられず、いつまでも眺めていたくなる魅力があります。おそらく、サイズだけでなく色や仕上げも含めた、要素の足し算/引き算のバランスが優れているからではないでしょうか。  シンプルながらダイナミックなケースが器となり、細部にまで緻密にこだわりを感じる華やかな文字板を、うまく引き立てています。