Akihiko Kuroda

DESIGNER

https://ms.citizen.jp/assets/akihiko-kuroda
名前
黒田 昭彦
専門
プロダクトデザイン
地域
日本
経歴
入社してプロマスターの立ち上げからプロマスター商品を担当すると共に、携帯液晶テレビなど時計以外の商品にも従事。その後国内中、低価格商品や海外中近モデルを担当。2000年に香港に駐在。帰任後、再び国内外モデルやコネクテッドウオッチのデザイン業務と共に文字板開発にも携わる。現在は主に国内商品を担当。
趣味
バイクレース鑑賞
https://ms.citizen.jp/assets/017_02-06_インディペンデント_01

フラッシュサーフェース フォルム

 メタルバンドの腕時計は基本的に時計本体とバンドが別部品で構成されていて意匠的には別のものということが多いのですが、本モデルは薄いメタルプレートのバンドが時計本体を覆うことで、特異な意匠を有しています。  一枚のソリッドメタルプレートだけで構成することで一切の凹凸がないフラッシュサーフェスにより滑らかな肌触りを実現するとともに、その意匠を強調するため、外縁にはビビッドな赤いウレタン素材を途切れることなく縁取ることにより、ケースとバンドの一体感を際立たせています。  赤いウレタン素材のアクセントは単なる意匠面だけではなく、ウレタン素材で皮膚に接触する部分を保護する機能的な意図があり、“技術と美の融合”の一つの答えを示したモデルと言えます。  またソリッドメタルプレートの外装は、外側にテンションがかかっている状態となり、腕との間に空間を生み、いままでにない心地よい装着感とストレスを感じさせない視覚的効果を与えています。  時刻表記においてもそれまでの平面的なデジタル表記ではなく、擬似的な立体表現を採用することで今までにない先進性を感じさせるデジタル表現を実現しています。

https://ms.citizen.jp/assets/058_07-03_アテッサ チタン_01

腕と一体化するミニマム形状

 人体に最もやさしい金属の一つであるチタニウム。そのやさしさという最大の特性を一瞬で感じ取ることができる“温かみ”をシンプルでなめらかでしっとりとした肌触りの良いフォルムによって高い次元で実現しています。  さらに、もう一つの特徴である“軽量”を活かすことを意識した一切の無駄を省いたミニマムデザイン。腕からの盛り上がりを感じさせない、エッジのないバンド断面形状。どこをとっても段差を感じない面処理や金属だけが持つ鈍い光を全面的に表現した、無駄を省いたシンプルな形状。腕と時計の程よい隙間。これらは人体への心地よさ、時計と人体とを一体化することへの配慮のあらわれです。  またシンプルな形状は動きが感じられないことが多いですが、この時計のバンドは装着すると、隙間を感じさせない部分と隙間がはっきり感じ取れる部分があり、常に移動する様は生物=人体を感じさせます。  本時計はチタニウムという新素材をあらゆる観点から考察し、素材の利点を生かして装着する人に最大限配慮したモデルと言えます。

https://ms.citizen.jp/assets/065_08-03_プロマスター ヨーロッパ_01

アフォーダンスデザイン

 シチズンのクロノグラフ付き腕時計の標準レイアウトと言えるムーブメント、Cal.3510を搭載した本モデル。  Cal.3510を搭載したモデルはデザイナーの手により、いろいろな方向性に味付けをされ市場に投入されましたが、中でも本モデルはクロノグラフの基本操作を一見してユーザーによりわかりやすく表現した、高度なデザインのものと言えます。  腕に装着しクロノグラフの機能を使用するときにユーザーにストレスを与えないプッシュボタンの配置と針の位置。クロノグラフの複雑な操作性をひと目で理解し、本能的かつ無意識的な動作を促すため、プッシュボタンにそれぞれ特徴のある形状や大きさが与えられています。ケースの色調の配色やアシンメトリーのスタイリングなど、すべてにおいて今までにないデザインとなっています。  こうした特徴的な形状や、外周リングに取り入れられた機械部品形状、左右非対称のケースに見られる4 所のビスなどが“クロノグラフ”=“精密な機械”という印象を連想させるディテールとなってモデルを仕上げていると言えるのではないでしょうか。

https://ms.citizen.jp/assets/088_11-11_ダイバー全夜光_01

有機的ディテール

 金属が主成分の腕時計は、工業生産により生み出されるものであり、また昨今ではそのデザイン作業にコンピューターが主として用いられています。そのような中、ともすればその意匠は無機的なものが多くなりがちであるように感じます。  本モデルは、時字、ケース側面、ベゼルや裏ぶたのエッジ、りゅうずなど、細部に曲面やアールをとりいれることで、無機的になりがちな腕時計の意匠において、有機的な要素としてのバランスを取っています。  ある意味では生物的とも言えるディテールを取り入れることによって、身に着ける人に跳ね返すような印象を与えず、心理的な抵抗なく身に着けられるような、適度に柔軟性のある形状をつくりだしています。