赤ちゃんのような感覚
こういったものこそ現代の人が持つべき時計ではないか、そう思わせてくれる一品です。
モノがあふれている世の中に、大切に扱いたいという気持ちを催させ、しかし決して幾何学的ではない柔らかな曲率で構成されたモノ自身が持つ愛おしさが、まるで赤ちゃんを扱うかのような気分にさせてくれます。巻きすぎると千切れてしまうのではないかと、丁寧にまわすりゅうずはしっかりとしたクリック感とバネの反発力を感じさせてくれます。
秒針は、機械ならではの小気味よい運針を見せてくれます。いまどきの時計にない、チクタクとなる音も大きく、中に機械が入っているのだと実感させてくれます。
その機械を見たくて裏ぶたを開くと、コリマソナージュがきらめく歯車の存在感が目を引きます。りゅうずに連動して煌めくのでついついまわしてしまいます。発色のよいルビーは、奥にある動くがんぎ車に、動くたび違って見える化粧を施しているかのようです。歩度調整も自分でできそうな大きな緩急針で、機械まかせではない自分の時間のペースを生み出している感覚になります。
いつもは使わないジーンズの右小ポケットにするっと収まり、卵のように手になじみます。時のあいだの間隔は、いつでも自分で変えられる。赤ちゃんのように優しく、大切に扱いたくなる。
100年の歴史が始まった最初の時計です。