誠実さの“真摯美”
「スーパーデラックス」は1958年に発売されたモデル。1950年代(昭和25~34年)の日本の工業製品を調べてみると、現在も広く市民に使われ続けている生活に密着した工業製品が多く見られます。そんな時代にこの時計は世に送り出されました。
シンプルで実用的なルックスをしており、過度な装飾はケースや文字板、小部品からは見られず使い勝手も良さそうで、時代の影響をしっかり受けているように思えます。あえて挙げるのならばボックス状のガラス、ロケットの先端のようなりゅうずとカーブ形状の裏ぶたの3 箇所は、程よく個性を演出しています。細いケースラグ、細いベゼルや大径の文字板など、細部の作りこみの美しさには驚かされます。
文字板外周部には曲げ加工が施され、ボックス状のガラスとカーブ形状の裏ぶたとが組み合わさり、「薄さ、性能、加工美」をしっかりと体言しています。シチズンの真摯な姿勢が製品にしっかり宿っており、このまま現代でも十分販売できそうな魅力を持っています。文字板曲げ加工の反射も、柔らかく心地が良いものです。
この「スーパーデラックス」からは、真摯な作りこみと柔らかい人肌のような温かさが感じられます。