新素材の表現
腕時計の素材として、ステンレスが主流であった70 年代。この「特殊軽合金」による「黒い」外装はかなりセンセーショナルに市場に登場しました。こうした新素材への取り組みを他社に先駆けて行うのは、現在へと続くシチズンのものづくりの姿勢と言えます。
「この新素材をいかに美しく表現するか」という視点でこのモデルを見ると、非常に上手くまとめられています。円錐形状によって造形されたベゼルの無いモダンな造形。ケース側面部分も垂直面ではなく、ケース内側方向へ傾斜させた斜面によって造形することで、円錐面との稜線がモダンな造形にあっても無機質にならずに正面や側面など、どこから見ても表情のあるキャラクターラインを生み出しています。ケース裏斜面も高めの位置に稜線を設定することで、ケースの厚みを感じさせない、互いの稜線が良いバランスになるよう
に配慮されています。
ケース、バンド、文字板と主たる構成部品が全て「黒」によって構成される中、見返し部分のリングパーツの鏡面仕上げによるシルバーカラーは非常に良いアクセントになっており、全体を引き締めています。また時字や針に施された発色の良い「オレンジ」によって非常に新鮮なカラー表現がなされていて、ケースの新素材によるモダン表現と相まってこのモデルの印象をより強いものと
しています。