精度の視覚化
新開発の機械式ムーブメントCal.0200は、傘下のManufacture La Joux-Perret S.A.(スイス ラ・ショー=ド=フォン、ラ・ジュー・ペレ社)の技術やノウハウを活かして高い審美性を実現した次世代ムーブメントです。日本とスイス、両国の時計製造文化を融合し誕生しました。センター2針スモールセコンドというクラシカルな機構は「時計の原点に則した美しい輪列を表現したい」という開発者の強い思いによるものです。設計・組立はシチズンで行い、外観の装飾はラ・ジュー・ペレ社が保有する高度で幅広い装飾技術を最大限活用するというかたちで、このムーブメントの開発はスタートしました。
視覚的演出
薄型化はそれが「機能を満たした」場合、技術的に大きなインパクトをもたらす反面、「要素を削る」という点でデザイン上制限を受けることとなります。このモデルは光発電時計最薄という厳しい寸法制限を克服し、機能と装飾性を余すことなく造形化しています。 ケースに複合素材サーメットを使い、ベゼルと裏ぶたには硬く、耐食性等に優れたバインダレス超硬合金をサンドした構造で、パーツの組合せ面に凹凸を設けています。これは総厚増加を抑え且つ強度を高める造形であり、さらに、ケースとラグ先側面の上下に斜面を設けることで、視覚的にもより薄く感じさせる工夫を凝らしています。 文字板の時字/ 放射状のパターン印刷は細く長く、印刷の上下を先細りさせ、外径/ 内径のアウトラインがぼやけて見える効果を持たせています。この時計の動力源が「光」であることを象徴した表現であり、印刷面積増加に伴う光透過率の低下を抑える効果を兼ねています。 時分針は鏡面と艶消仕上げを施して鏡面のブラックアウトを活かし、実幅より細く感じさせ、視認性とケースデザインにマッチしたスマート感を演出しています。 「魅せる」試みが随所に感じ取れる薄型モデルです。
「相手が基準」という視点
このモデルは、アテッサらしいエッジのある多面加工されたケースに、ビジネスウオッチとして「重要な要素」が考慮されたモデルと言えます。その重要な要素とは、まず視認性です。例えば、慌ただしい場面においてもしっかり時刻を読み取ることが実用時計(ビジネスウオッチ)には欠かせません。その点、このモデルは多機能時計にありがちな雑多な文字板ではなく、非常に整理され、時刻を読み取りやすいように設計がなされています。 そして、ビジネスウオッチとして重要なもうひとつの要素が、相手への印象です。ビジネスシーンで使う時計は、TPO に応じた佇まいでなくてはなりません。その点、このモデルは全体的に丸みを帯びた形状のため、アテッサらしいエッジもありながら柔らかい印象を与えます。ビジネスシーンに寄り添う時計として非常にバランスのとれた名品です。
人に優しく
オールアナログ式の水深計付きダイバーズウオッチ。アナログの持つ親しみやすさや視認性の良さを最大のポイントにして、余分な機能は出来るだけ省き、徹底的に使いやすさを追求することでベネフィットを向上させています。 Cal. B740は、ダイビングに欠かせない時刻と水深を指針によって同時表示します。時分針と同軸に深度針を設け、いつも見慣れている時計感覚で針の角度によって現在深度が容易に読み取れます。すなわち、切分一目盛が1 m 表示になっているため、深度針が「何分」を表示しているかで水深を知ることができ、何m 潜れるかも一目で分かります。これは夜光針によって暗所でも有効です。 レジスターリングのタイプには大きく分けて2通りあります。ローレットカットを全周に配置して摩擦で指を引っ掛けて回すタイプ。もう一方は6つくらいの大きなブロックを配置して掴んで回すタイプ。本モデルは前者にあたり、火山のような形状をしているため指の腹まで引っ掛かり、非常に回しやすくなっています。 ケースの裏形状については、センサーの下への出っ張りをなだらかな曲面で覆って一体感のあるものに仕上げられています。また複雑な三次曲面の構成はとても腕当たりが良く、優しさが感じられます。
かくし味
時計全体を構成するパーツを丁寧に見ていくと、様々な隠し味が潜んでいます。 [文字板 - 時字]意外にも時字の色が黒。下地が黒文字板ということもあり外形が溶け込んでいます。しかし動かすと時字がキラキラと光り、質感がしっかりと伝わります。上面に施された白い夜光とのコントラストが大きくなり、直線的な顔のイメージへと繋がります。 [文字板 - 印刷]白と銀の印刷を使い分けています。瞬時に理解するべき表示は白で強調され、補足となる内容は銀で表示されています。 [文字板 - 格子状パターン]近くで見ないと確認できませんが、一度わかると顔の豊かさを演出していることに気が付きます。その繊細さからは、ハイテクで確かな時計という印象を受けます。 [バンド]中駒と外駒の仕上げを縦ヘアラインと横ヘアラインにしています。同じアール形状ながらも仕上げを変えることで見え方が大きく違います。先カンのミラーパーツも相まって、オリジナリティを感じさせます。 様々な隠し味・要素を含みながらも、それらが巧みなテクニックで溶け込み調和しています。それぞれの要素が主張し過ぎずに、互いの良さを引き立て合っています。細部のこだわりが相互に補完し合い、より美しさを際立たせます。
演出力
大型ムーブメント使用時の制約を逆手に取り、大きな容積を生かした奥行きのあるダイナミックな造形によって機能を裏付けすることで、「ただならぬ存在感」を演出したモデル。 「黒」と「緑」のコントラストで構成されたデザインは美しさと時計の機能を合わせ持ちます。 ケースは受信感度に影響を与えないようセラミック材を使用し、めっきでは得られない平滑度の高い光沢感のある仕上げ処理が施されています。 文字板外周をぐるりと囲む鮮やかな緑のコイルは初代電波時計のアンテナを意識したものです。ベゼルをサファイアガラス面に配置し、あたかも浮遊しているかのような表現は衛星が周回する軌道をイメージさせ、側面からも文字板緑のコイルのモチーフの形状が確認でき、あらゆる角度から見て楽しめるようデザインされています。 時針を立体的に折り曲げ、ディスク式の針に刻まれた文字が回転する様、小さな空間に精密に組み込まれたパーツが作動し、それが正常に機能する様は都市のジオラマを腕に巻くかのようなワクワク感、ユーザーを童心に帰らせる楽しさを提供します。 時計に興味を持つ、持たないに関わらず、思わず立ち止まって見入ってしまう。そんな演出がこの時計には込められています。
レトロフューチャー
70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。 この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。 時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。 15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。 加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。 特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。